先週末6日に発表された8月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数(NFP)の前月比の伸びこそ予想を下回ったものの、失業率は前回より低下し、平均時給も前回よりアップしていたことから、雇用統計自体への市場の反応は比較的落ち着いたものとなった。
ところが、その後に米連邦準備制度理事会(FRB)のウォーラー理事が「適切であれば利下げの前倒しを支持」、「現在の一連のデータは行動を必要としている」などと発言したことで、俄かにドル売りが加速。一時的にもドル/円が141.76円処まで下押す場面も垣間見られた。
この日の安値は、直近(8月5日)安値=141.68円に顔合わせとなるもので、当面は同安値水準、あるいは一目均衡表の週足「雲」下限(現在は140.77円)が下値の目安として意識されやすくなるものと見られる。なお、この週足「雲」下限の水準は23年1月安値から今年7月高値までの上昇に対する61.8%押しの水準にも近く、その下方には昨年12月安値=140.25円も位置する。
つまるところ、140円半ば前後の水準というのは複数の節目が重なるところとして意識されやすく、基本的には下値サポートとして機能しやすいと見られる。ただ、ウォーラー理事の発言を受けて6日の米主要株価指数がいずれも大きく値を下げ、連れてCME日経平均先物も大幅安となったことは週明けの日本株市場に暗い影を落とす。
日経平均株価は先週2日に一旦3万9080円まで値を戻したが、そこには「予想PER=16倍の壁」が立ちはだかり、もともと目先的に戻り一巡との感が強まっていた。また、8月6日以降の戻りがかなり急ピッチであったため、先週は騰落レシオ(25日)が一時130を超えるなど、短期的な高値警戒シグナルが灯っていた。
そんななか、CME先物が大幅安となったことで、週明けの日経平均株価は一旦大きく値を下げる公算が大きい。先週末まで下値を支えていた52週移動平均線などの節目を明確に下抜ければ、仕掛け的にドル/円にも売りが浴びせられやすくなると見られる。
今週発表される8月の米消費者物価指数(CPI・11日)や生産者物価指数(PPI・12日)の結果に対する市場の反応にもよるが、今のところ9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)における利下げ幅は0.25%ポイントに留まるとの見方が優勢となっている模様。仮にそうなれば、市場は一旦“安堵の表情”を示す可能性が高いだろう。
足元の市場は、あまりにもリスクに過敏になっており、それだけ大幅利下げの実施決定はハードルが高いと思われる。むろん、目下の米国経済がそこまで深刻な状況にあるわけではないだろうし、年内に追加利下げの決定を下す機会はあと2回ある。
再認識しておきたいのは「金融政策は常に景気(実態)の“後追い”となるのが宿命」ということである。誤って“先回り”してしまえば、その政策自体が景気を冷やす役回りを務め、むしろ政策意図とは逆の方向に景気が走り出してしまうからである。
もちろん、政策担当者らも「そんなことは百も承知」であろうし、今回のFOMCにおいても冷静かつ適切な判断が下されるものと個人的には期待する。
今週12日の欧州中央銀行(ECB)理事会における追加利下げの実施は既に織り込み済みとなっており、そのこと自体が対ユーロでのドルを強気に傾かせる可能性は低い。6日のユーロ/ドルは長めの上ヒゲを伴う陰線となったが、それは同日の米株の大幅下落に伴う一時的なリスク回避のドル買いであったと解釈される。
今週、ドル売り・円買いの流れに歯止めをかける可能性があるものと言えば、金融経済懇談会に出席する中川日銀審議委員(11日)と田村日銀審議委員(12日)の発言ということになろうか。タカ派とされる田村氏は、3月に予想外のハト派発言で円売りを誘った“実績”があり、その注目度は高い。
(09/09 07:00)
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