前回(7月8日)更新分の本欄で、ドル/円について「そろそろ潮目が変わり始めてもおかしくないように思われる」と述べたが、実際、11日以降のドル/円は明らかに当面の下値を模索する格好となった。先週18日には一時156円割れの水準まで下押し、一目均衡表の日足「雲」を意識した動きも見られている。
既知のとおり、その一つのきっかけとなったのは本邦当局が円買い介入を実施した可能性が濃厚となったことにある。日銀が先週16日に公表した当座預金残高の見通しから判断して、市場では少なくとも今月11日と12日に合わせておよそ5~6兆円規模の介入があったものと推計されている。結果、それまで大きく積み上がっていた円ショートの巻き戻しが一気に強まったことのインパクトも大きかったと言える。
もちろん、11日に発表された6月の米消費者物価指数(CPI)が弱めの結果であったことも軽視できない。同指標の結果を受けて、市場では米連邦準備制度理事会(FRB)が9月に利下げを開始するとの市場の見方を“確信”へと変化させた模様。今のところ、短期金融市場では9月米利下げの可能性が完全に織り込まれている。
加えて、米国でトランプ前大統領が製造業の復活を目指して、ドル高是正や関税引き上げを進める姿勢を鮮明にしていることにも市場は反応。先週16日公開の米ブルームバーグとのインタビューでも、トランプ氏は「強いドルが問題だ」と指摘し、中国人民元と日本円の弱さを名指して批判してきていた。
そこに、河野太郎デジタル相の「円は安すぎる。価値を戻す必要がある」との17日のインタビュー報道が伝わってきたことにも市場はやや過剰に反応した。「河野氏も次期首相の有力候補の1人」との認識を本邦勢よりも強く持っていると思われる海外勢のなかには、同氏の発言によって慌てて円売りポジションを手仕舞う向きもあった模様。なお、後に同氏は「金利が上がれば円高になるという理論を申し上げただけだ」と述べ、自らの発言が招いた事態の収拾を図っている。
なお、バイデン大統領が11月の大統領選を戦う党の候補者指名を辞退したことで、当面は米民主党が後継として正式に指名する候補者があらためて掲げる政策方針にも目を向ける必要があるということも一応は心得ておきたい。
とまれ、11日以降のドル/円の下げ(円買いの動き)は先週の安値(=155円台前半)をもってひとまず一服したとの感が強い。その安値というのは、前述した日足「雲」の水準であったと同時に5月3日安値からの上昇に対する61.8%押しの水準でもあり、少なくともテクニカル的には当面の下値を確認する格好となった。
そもそも、9月米利下げの可能性やトランプ前大統領の発言内容などは、すでに相場に一旦織り込まれた格好となっている。今週は26日に6月の米個人消費支出(PCE)デフレータの発表を控えていることから、ある程度はドルの上値が押さえられやすくなる可能性もあるが、仮に結果が弱めに出たところで、それも想定の範囲内ではある。
先週末19日、世界的なシステムトラブルが生じたことで米国株相場が下落し、リスク・オフの円買い・ドル売りが進む場面もあったものの、欧州通貨やオセアニア通貨に対してはドル高が進んでおり、ドルの基調そのものは回復傾向にあると言える。
よって、目先のドル/円はもう一段の戻りを試す可能性が高いと見られ、ひとまずは日足の「基準線」や「転換線」が位置する158.60-70円処が意識されやすいと見ておきたい。個人的には、目先的なショートカバーの動きを見定めながら、次の戻り売りのタイミングをじっくりうかがいたい。一方、ユーロ/ドルについては6月安値から先週17日高値までの上げに対する38.2%押し=1.0840ドル処が一つの下値の目安になると見る。
(07/22 07:00)
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