ドル/円は、先週末21日まで7日続伸。市場には、再び160円台を試しそうなムードが漂っている。依然、円買い要素が乏しいことに変わりはないが、先週は週末にかけてユーロやポンド、スイスフラン、中国人民元なども対ドルで売りを浴びた。つまり、相変わらず円安基調が続いているところに、ドル独歩高の流れまでもが上乗せされた格好となっているわけである。
フランス政治情勢への不透明感の台頭が、ユーロの上値を圧迫していることは言うに及ばず。投資家は、6月30日と7月7日に行われる選挙を前にユーロへのエクスポージャーを減らしている模様である。21日に発表された6月の製造業PMI(購買担当者景気指数)と非製造業PMIはともに事前予想と前回水準を下回り、兆しが見え始めていた欧州の景気回復に対する期待に冷や水を浴びせかねない状況となっている。
加えて、先週はスイス国立銀行が2会合連続の利下げに踏み切ったことと、英イングランド中銀(BOE)による利下げ開始への期待が市場で強まったことも、ユーロの上値を押さえることに一役買う格好となった。
スイス中銀による利下げについては、最近のスイスフランの上昇に対する“市場介入”の意味合いが強いと見られ、景気の先行き懸念に伴う利下げでの対応というよりは、足元でインフレ鈍化が進んでいることを背景に「利下げしやすい状況にあったから実施した」というところであろう。結果、スイスフラン高には一旦歯止めがかかっており、それがドル独歩高に加担する格好となった。
一方、BOEは先週20日に行われた金融政策委員会(MPC)で事前の予想通りに政策を据え置いた。ただ、9名の政策委員のうち2名が利下げを主張していたほか、議事録で一部の委員が「今回の決定は微妙なバランスだった」と言及したことで、市場にはBOEが想定よりも早い段階で利下げに踏み切るとの見方が強まっている。結果、週末にかけてポンド/ドルが下押し、そのこともドル独歩高に加担した。
既知のとおり、米財務省が20日、外国為替報告書で日本を「監視リスト」に追加したと公表したことも円安・ドル高の流れに加勢した。市場からは「政府・日銀による為替介入がより困難になった」との声も聞かれており、結果としてドル/円が一段と上値を伸ばしたことは、ある意味で“逆効果”になったのではないかと思われてならない。
確かに、前回の介入後に政府・日銀が動きにくくなっていることは事実であろうし、動けないことを前提にするならば、鈴木財務相や神田財務官による口先介入などほとんど無力であると言わざるを得ない。よって、目下の市場は「安心して円売りにポジションを傾けられる(円キャリー取引を手掛けられる)」といった状況になってしまっている。
とはいえ、日本国内のインフレ率は着実に強まってきており、21日に発表された5月の消費者物価指数も総合指数(除く生鮮食品)が前年同月比で2.5%の上昇となっていた。岸田首相は、電気・ガス料金の負担軽減策を8月から3カ月間行うなどと表明していたが、仮に今後一段の円安が進んでしまったら、ますます値上げの範囲が広範に及ぶことにもなりかねない。
どのみち、7月30-31日の次回会合では、確実に何らかの具体策が日銀から提示される。前日本銀行理事の清水季子氏によれば「最近の植田和男総裁の発言からはインフレ見通しに対して明らかに確信を深めている様子がうかがえる」とのこと。実際、植田総裁は7月の利上げリスクを繰り返し発信しているわけで、これが植田流の市場に対するメッセージであるとするなら、市場はそろそろ「どうせ動けまい」とタカを括ることに慎重になる必要もあるのではないだろうか。
(06/24 08:10)
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