実に数多くのビッグイベントが相次いだ先週であったが、すべてを通過した今、率直に「やはり米国の景気とインフレは着実に鈍化傾向を辿っている」との思いをより強くしているのは筆者だけであろうか。
実際、12日に発表された5月の米消費者物価指数(CPI)は事前の市場予想と前回数値を下回り、2カ月連続でインフレ鈍化傾向を示した。同日は、その後に米連邦公開市場委員会(FOMC)の参加メンバーらによる金利見通し(ドット・プロット)が公表され、その中央値は「年内1回の利下げ予想」に留まったが、より細かく見ると「年内2回」と回答したメンバーが8人いたことも事実。市場からは「今回の金利見通しは最新(5月)のCPIを考慮していない可能性が高い」との声も聞かれていた。
会合後に発表された声明においても「ここ数カ月に委員会が目指す2%のインフレ目標に向けて緩慢なる一段の進展が見られた」と、文言の一部に修正が施されており、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長も、FOMC後の会見で「直近のインフレ指標は今年の早い時期より良好な内容」、「政策が景気を抑制しており、我々が望むような効果をもたらしているという証拠は非常に明確」と述べていた。
また、今回のドット・プロットにおいては25年の利下げ予想が「4回」と、従来予想の「3回」から増えている。つまり、必ずしもタカ派寄りというわけではなく、個人的には「今後のドルの上値余地は自ずと限られる」との思いを抱いた。
さらに、翌13日に発表された5月の米生産者物価指数(PPI)も明らかにインフレ鈍化を示す結果であったし、週末14日に発表された6月のミシガン大学消費者信頼感指数が予想以上に落ち込んだことで、あらためて米消費減速への懸念が強まっているという事実も見逃せない。気が付けば、先週の序盤に4.47%台まで上昇していた米10年債利回りは、週末にかけて4.22%台まで低下している。
それでも、足元のドル/円は157.40円処と、5月の米CPIが発表される前の水準まで持ち直してきている。一つには、やはりフランスの政治情勢の行方に対する警戒感からリスク回避の円買い・ドル買いが広がったという部分があるのだろう。
そして、何より今回の日銀金融政策決定会合の結果が円相場の方向性を変えるには不十分だったということも大きい。既知のとおり、日銀は会合で長期国債の買い入れを減額していく方針を決めたものの、直ちに減額を始めたわけではなかった。結果、会合後に一旦円買いポジションが巻き戻されてドル/円は一時158円台に乗せることとなったが、後の記者会見における植田日銀総裁の幾つかの発言が、結局は会合後のドル/円の上昇を帳消しにする格好となった。市場の一部からは「決められない日銀」と評する声も聞かれるが、過去の“失敗”を省みながら市場との対話を試みる姿勢は評価できなくもない。
どのみち、7月30-31日の次回会合では、確実に具体策が提示されるというのである。そもそも国債の買い入れ減額だけで円相場の方向性を変えることは難しいと思われるが、総裁は「ほんのわずかしか減額しないということではない」と述べていた。経済・物価情勢次第で利上げは「当然あり得る話」とも述べており、これから次回会合までの間に市場で様々な憶測が飛び交うこととなるのは間違いない。
当面は、まず欧州の政局の行方を横睨みしながら、ユーロ/ドルの値動きを見定めていくことが重要となろう。足元は1.07ドル処の節目まで一旦押し下げており、そろそろ切り返してくる可能性もあると見る。仮に政治要因によってユーロが強い売り圧力にさらされるとしても、それは「だいぶ先の話」であろう。そのうえで、ドル/円に対しては基本的に戻り売り姿勢で臨みたいと個人的には考える。
(06/17 07:00)
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