先週27日、日銀の内田副総裁は金融研究所主催の「2024年国際コンファランス」で基調講演し、3月の政策変更で短期金利を主な政策ツールとする金融政策の枠組みに戻ったことをして「デフレとゼロ金利制約との闘いの終焉は視野に入った」と語った。
これを市場へのやや踏み込んだメッセージと捉えれば、一部から「6月13-14日の会合で円安対策のために0.25%ポイントの追加利上げと国債買い入れの大幅な減額が決まる可能性がある」と囁く声が聞こえてくるのも頷けなくはない。
そして現実問題、足元では日本の新発10年債利回りが連日強含みで推移している。先週30日には一時1.10%台に乗せ、その後は一旦弱含みとなる場面もあったが、週末にかけて再び持ち直す動きが見られた。
その割に、なおもドル/円は高止まりしており、言うなれば“日銀スルー”の状態となっている。それは、一つにユーロ/円やポンド/円などクロス円全般の想定以上に強い動きが後押ししているところもある。クロス円はドル/円と同様にキャリートレードを有効とするものの、ドル/円より介入警戒感が弱い。ただ、そうした「円全面安」の状況が6月の日銀会合を通過した後には大きく変わっている可能性もないではない。
気になるユーロ/円の行方については、やはりユーロ/ドルの値動きから推察することが重要で、当面は足元で交錯している複数の節目をクリアに下抜けるか否かに注視しておくことが肝要となる。先週30日には一時1.0788ドル処まで下押す場面もあったが、そこは200日移動平均線(200日線)がサポートする格好で下げ渋り、週末にかけては89日移動平均線と(89日線)21日移動平均線(21日線)を再び上抜ける強気の動きとなった。
足元では、ユーロ圏の景況感に改善の動きが見られ、域内の雇用関連データも強めの結果を示している。実際、31日に発表された5月のユーロ圏消費者物価指数(HICP)速報値も総合指数、コア指数ともに予想を上回る伸びとなっていた。既知のとおり、今週6日の欧州中央銀行(ECB)理事会では0.25%ポイントの利下げが確実視されているが、その後の利下げの道筋については市場の見方が分かれている。
一方で、先週はやや弱めの米指標がドルの上値を押さえたという点も見逃せない。ことに印象的だったのは、やはり30日に発表された1-3月期の米GDP改定値が速報値から大きく下方修正されたことである。個人消費の伸びが速報値から大きく下方に改定されていたことが大きく影響した。
それもそのはず、ここにきて米主要小売業の不振ぶりを示す様々なニュースが連日のごとく目耳に飛び込んでくるようになっている。5月末までに出揃った2-4月期決算は減収・減益が目立ち、株式市場では米消費関連株が全体に低調な株価推移となっている。5月25日付の日本経済新聞(夕刊)は、米国の消費が弱含みとなっていることを映すものとして「ハンバーガーチェーンによる安売り競争」が激化していることを伝えている。
コロナ禍で積み上がった“過剰貯蓄”が減少し、根強いインフレで米国の家計負担も高まっている。足元では所得の伸びも鈍化傾向にあり、仮に今後、頼みの綱となっている米株価が調整色を強めたならば、米国の消費マインドは一段と低下することとなろう。
先週31日のドル/円は、同日発表された4月の米PCEデフレータの結果からインフレ鈍化期待が強まったことで一旦156円台半ばまで大きく値を下げた。その後は再び157円台を回復したが、それは月末のロンドンフィキシングに絡んだ実需の動きによるところも大きかった。今週の米株価は波乱含みとなる可能性もあり、ドル/円については基本的に戻り売りのスタンスで臨みたいと考える。
(06/03 07:00)
FX・CFD・証券取引・外国為替のことならマネーパートナーズ -外為を誠実に-