前回更新分の本欄で、筆者は「個人がドル/円に関わることには相応の慎重さが求められる」、「現在200日移動平均線が位置するところまで値を戻してきたユーロ/ドルの戻り売りの方を検討したい」と述べた。
そして案の定、先週は比較的大きくドル高・ユーロ安が進む結果となった。何と言っても大きかったのは、10日に発表された3月の米消費者物価指数(CPI)の結果が強めであったこと。ことに、住居費・食品・エネルギーを除いたサービスインフレ、いわゆるスーパーコアが前月比0.6%、前年比4.8%上昇という結果となったことは刮目に値する。結果、市場の米利下げ期待は一段と後退した。
今月5日、米連邦準備制度理事会(FRB)のボウマン理事が「可能性は低いものの、インフレを抑制するために追加利上げが必要になる可能性はある」と述べ、市場の一部では驚きをもって受け止められた。しかし、足元で米インフレの粘着性を示すデータの発表が相次ぐなかにあっては、その可能性を全面否定することも躊躇われる。
筆者は先週、かねてタカ派寄りの発言を繰り返していることで知られるアトランタ連銀のボスティック総裁の発言に注目していた。そして同氏は、想定していた通り「今年は年末にかけて1回の利下げ」、「私は利下げを急いでいない」との見解を示した。今となっては、市場で最も理解が得られやすい見立てということになろう。むしろ、今後は別方向の心配をした方が良いのではないかとも思う。それは、米国経済のソフトランディング(軟着陸)シナリオの信ぴょう性に疑問符が付き始めることに対する心配である。JPモルガンのジェイミー・ダイモンCEO曰く「市場は楽観的過ぎるかもしれない」
先週末の米国株市場では、NYダウ平均が前日比で475ドル安となり、フィラデルフ
ィア半導体株(SOX)指数に至っては3.29%もの大幅な下げを演じた。中東の地政学リスクの高まりが主要因と見られるが、足元で米利下げ期待が遠退いて、米10年債利回りが強含みで推移していることとも決して無縁ではない。
現実的に米大手IT・ハイテク株が大きく値を下げると、そのぶん米国内の消費マインドが低下しやすくなることも事実。その意味でも、今週18日に予定される台湾TSMCの1-3月期決算の結果に対する市場の反応は大いに注目されるところである。
米CPIが強めの結果だったことを受けて、いまや153円台まで一気に駆け上がったドル/円だが、その背景には152円手前のところで防戦売りに徹していたオプション・トレーダーが買い戻しに転じざるを得なくなったことや、かなりまとまったストップロス・オーダーが巻き込まれたという事情もある。つまり、足元の急な値動きには物理的(需給的)な側面も大いに関わっているということであり、なおも当面は“本来の居場所”を探る時間帯が続くと見られる。
当然、本邦当局による為替介入への警戒も強まるところではあるが、ここで直ちに介入すれば「やはり152円が当局の防衛ラインだった」と見透かされかねない。そこで、目下の市場では「介入に入るとしても今週17-18日にワシントンで開かれるG20財務相中央銀行総裁会議を通過した後になる」との見方が広がっている。やはり、今週もドル/円に関わることには大いに慎重であらねばならないと考える。
一方、先週10日に200日移動平均線をクリアに下抜けたユーロ/ドルは、週末にかけて2月安値=1.0695ドル処をも下抜けており、当面は昨年12月高値と今年2月安値、3月高値から弾き出されるN計算値=1.0537ドル処が意識されやすくなると心得ておきたい。むろん、目先は一定の戻りを試す動きも見られると思われ、個人的には1.07ドル処からの戻り売り方針で臨みたいと考える。
(04/15 07:00)
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