先週は、日銀ならびに米連邦準備制度理事会(FRB)当局者らの言動が外国為替相場、とくにドル/円の値動きに一定の影響を及ぼしたことが印象に残る。
まず、27日の午前中(日本時間)に田村日銀審議委員の発言が伝わり、ドル/円は一時的にも151.97円処まで急伸する場面があった。メディアは「34年ぶりの円安水準」などと大きく報じたが、実のところ田村氏は単に「当面、緩和的な金融環境が継続する」など、既に市場が織り込んでいる幾つかのワードを発しただけに過ぎない。
ただ、かねて同氏に対して「タカ派寄り」との印象を抱いている市場にとって少々意外感があったことは否定できず、そのことを一つの“口実”にしてドル買い・円売りを仕掛ける向きがあった模様。仕掛ける側にしてみれば、力ずくでも152円台に乗せることができれば、そこから見える“青天井”の領域はオイシイわけで、今後も折に触れて仕掛けようとする向きが現れる可能性は十分にあろう。
とはいえ、今のところ「152円の壁」を突き破るのはそうた易いことではなさそうである。152円手前のところでは「152円のノックアウト・オプションへの買い仕掛けと防戦売りの熾烈な攻防戦」が繰り広げられやすく、どちらの側もそう簡単に道を譲ってはくれない。
加えて、こうした局面では、やはり本邦当局者らによる口先介入の動きも相応に騒がしくなる。実際、27日には財務省と日銀、金融庁が突如「国際金融資本市場に関わる情報交換会」なるものを開催し、一段の円売り・ドル買いを強くけん制。結果、ドル/円は一旦151円台前半の水準までその水準を切り下げている。
その後は、週末まで151円台半ばの水準に上値の重さが感じられる状況が続くこととなったが、同時に下値の堅さも相当なものであった。その背景には、FRBのウォーラー理事やパウエル議長らのややタカ派寄りの発言が影響したこともあると見られる。ウォーラー氏は「最近のデータは今年の利下げの可能性が低いことを示唆している。急ぐ必要はない」などと述べ、週末にはパウエル氏も同様の考えを改めて示していた。
29日には、市場の注目度が高かった2月の個人消費支出(PCE)デフレータが発表され、結果は市場予想通りであったものの、事前に数値の上振れを警戒する向きが少なくなかったことから、発表直後の市場は一旦ドル売りで反応。しかし、最終的にドル/円は発表前の水準まで値を戻している。
目下のところ、ユーロやポンドに対してもドルの強さはハッキリと見て取れる。前回更新分の本欄で、筆者は「当面はユーロ/ドルやポンド/ドルの行方をいつも以上に注視しておきたい」と述べたが、実際にユーロ/ドルは週末にかけて1.08ドル処の節目や一目均衡表の日足「雲」下限をテクニカルに下抜ける動きとなった。
「米利下げ開始の時期が後ずれするのでは」との思惑が市場に広がる一方で、「欧州中央銀行(ECB)や英中銀(BOE)の利下げ開始時期は近づいている」との見方が強まっているのであるから、ユーロ/ドルやポンド/ドルの上値が重くなるのも無理はない。
印象深いのは、パウエルFRB議長が先週「米経済が非常に堅調なペースで成長し、労働市場も極めて強いという事実は、我々が利下げという重要な一歩を踏み出す前にインフレ率の低下についてもう少し確信を強める機会を与えている」と述べたこと。その意味でも、今週発表される2月の米求人件数や3月の米雇用統計の結果は注目度が極めて高い。
今週のドル/円については、151.20‐50円のレンジから上下に放れた場合、そのトレンドを短期でフォローする算段で臨みたい。また、ユーロ/ドルについては1.080‐1.081ドル処から戻り売りで臨むのが基本スタンスになると個人的には考える。
(04/01 07:00)
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