「やはり来たか!」今回の日銀の政策変更は強力だった。ドル円は午後5時過ぎには150.05円まで下落、相場は、日銀が緩和時代からの脱出の意思を明確にした、と表した。
植田総裁の記者会見終了時午後4時半過ぎには152.35円近辺、その後約30分で1円70銭も下落、今年3月19日以来の150円割れ目前というドル急落(円急騰)となった。これまでは植田総裁記者会見を待って、海外市場中心に円売りの仕掛けが入ったが、今回は全く逆。それほどまでに、市場(投機筋)の予想を超える引き締めパッケージであったと言える。
決定内容は、①政策金利を0.15%引きあげ、+0.25%程度とする、②長期国債買い入れの減額を2年後に現在月6兆円を月3兆円程度とする、であった。事前には、③声明文にある緩和文言「当面、緩和的な金融環境が継続すると考えている」の削除も予想されていた。結果は、表現は変えたが、「緩和的な金融環境は維持される」との文言は残ったことで、3つが揃う最もタカ派的変更にはならなかった。
しかし、事前の市場予想が約4割だった①が決定され、想定通りとはいえ②も金額、時期が具体的に決定されたことで、政策変更のインパクトは大きかった。これまでの決断が遅いと言われた日銀の評価を、覆す内容であったと評価されたのであろう。海外中心に円買いに動いたことは、今後の「利上げへのパス(道筋:植田総裁が記者会見で好んで使っている言葉)」が、見えてきたことへの反応と考えられる。
この結果を受けて、10年国債金利が前日の1.003%から1.064%まで上昇、これまでの高値1.106%(7/3)には及ばないが、新たな金融市場調節方針は8月1日から適用されることから、為替市場にも影響が出てくる今後の長期金利動向に注意を要する。ちなみに短期金利(基準が無担保コールレート)は既に影響が出ている。昨日の最高金利が0.079%であったのに対し、今日の最高は0.280%であった。
そして米国FOMCが2日目の会合を終え、声明文が現地時間本日午後2時(日本時間明日未明8月1日午前3時)に発表され、パウエル議長の記者会見が同午後2時半(同午前3時半)に行われる。現在の政策金利が5.25-5.50%だが、今回は据え置き予想が96%(シカゴフェドウォッチ7/30午後12時半現在)であり、焦点は9月引き下げと、今年度中の引き下げ回数についてどの程度示唆がなされるかが焦点になっている。
ちなみにフェドウォッチでは9月の5.00-5.25%への引き下げ確率は86%(同時刻)とほぼ確の状態となっており、今年度の引き下げ回数も一番大きな確率を取れば11月(7日)、12月(18日)とも0.25%引き下げとなり、年末まで3回引き下げ、2024年末の政策金利は4.50-4.75%との予想になる。これは6月のドットチャートに比較すれば0.50%低い水準となる。日米の金利差縮小がどれだけ真実味が高まるか、ドル円が150円割れ定着するかを占う重要な段階になってきたと考えられる。
そして今週は、もう一つ大きなイベントがある。金曜日8月2日に米雇用統計が発表になる。ヘッドライン予想は、非農業部門雇用者数は、17.5万人(先月は20.6万人)と減少、失業率は、4.1%(先月4.1%)と変わらずとなっている。なお民間部門の雇用者数で言えば14.3万人(前月13.6万人)と増加であり、予想通りの数字であれば、ヘッドラインでドル売り、のちドル買い戻しとなる可能性もある。
さて、今後1週間の相場見通しであるが、ドル円は日米決定会合の結果や米国の景気動向を背景に荒い展開を予想するが、149.50-153.50円と150円台維持の展開を予想する。一方欧州通貨は、ユーロドルは1.0750-1.0950と小幅ユーロ安、対円では円高の流れを受けて161.00-166.00円と大幅なユーロ安円高と予想する。そして英ポンドドルは英国中央銀行(BOE)の決定会合で利下げ(5.25%→5.00%)を予想し1.2750-1.2950とポンド安と予想する。
(2024/7/31、 小池正一郎)